機能材料

前回のコラムで、「三次元織物は等方性材料」と言う「都市伝説」の誤解の1つとして書きました。しかし、三次元織物には、他にももっと「都市伝説」があります。

私が何年も前に複合材料の研究を始めた時、三次元織物についての最も有名な誤解は、この織物が閉じた細孔構造（閉気孔）を持っているということでした。
この都会の伝説は、「第14回Biennial Conference on Carbon」の学会の要旨集から生まれたと思います。

この研究では、さまざまな多方向複合材料の構造を詳細に分析しています。
表に記載されているように、3方向直交構造は交差点で閉じた細孔を形成しますが、開いた細孔は4方向以上の構造で形成されます。これらの研究結果から、3方向の繊維が直交に交差した三次元構造体は、閉気孔でありマトリックスの含浸が難しい、すなわち三次元織物もマトリックスを含浸するのが難しいと誤解されました。但し、表の注釈には「円柱状のロッドで作られた構造」と記載されており、三次元織物の事を書いているわけではありません。

このような背景から、三次元織物の細孔構造と分布について調べました。

図に水銀ポロシメトリー法を用いた三次元織物の細孔分布構造の測定結果を示します。
水銀が注入された総量の値が、繊維体積分率で計算した三次元織物の空隙値と同じであり、この三次元織物の構造内に液体材料を注入できた結果の1つです。
この図では三種類のピークがあり、三次元織物には三種類の構造の細孔が存在するとこが観察されました。

これらの結果について、以下の様に考察しました。
70ミクロンの大きな細孔分布は、プリフォームの表面粗い領域を示しています。
7ミクロンの最大ピークは、各フィラメント間のギャップを示しています。
この水銀ポロシメトリー法では、入口の細孔径しか測定できませんでした。このピーク値には、閉気孔として「キャビティ」と呼ばれる内部空間の値も含まれています。
この結果は、繊維間のスペースであるこのギャップの構造が通常のUDまたは2D材料と同じであるため、マトリックスをこのギャップから簡単に注入できることを示しています。

これらの結果から、三次元織物はマトリックスを注入するのに問題がないことを示しており、1つの都市伝説が消えました。

次回は、3D複合材料の機械的性質の測定方法に関する誤解について議論したいと思います。